女性ホルモンのはなし
女性のからだに一生に関わる「女性ホルモン」。
女性ホルモンは、月経周期やライフステージによって分泌量が変化しており、女性の心や体に様々な影響を与えています。
このコラムでは、女性ホルモンの基本的な情報だけでなく、女性ホルモンを整える方法や女性ホルモンのための食事などについても丁寧にお伝えしています。
女性ホルモンバランスプランナー®の石井理夏(あやか)
女性ホルモンとは?
体内で作られるホルモンは、体の機能を整える役割を持つ物質です。
ホルモンには様々な種類がありますが、その中の一つである女性ホルモンは、脳の視床下部からの指令を受けて、卵巣から分泌されているホルモンです。
女性の一生を通して分泌される女性ホルモンの量は、なんとティースプーン1杯程度。
女性ホルモンは、極微量の繊細なバランスで成り立っています。
月経周期やライフステージによって、女性ホルモンの分泌量は絶えず変化しており、その変化は月経・妊娠・出産の時だけではなく、女性の健康や美容、メンタルにまで影響を与えています。
そのため、月経周期によっては、お肌の調子が良くなったり、PMS(月経前症候群)の症状を感じやすくなったり。
また年代によっては更年期の症状を感じるなど、女性ホルモンは生涯に渡って、女性に深く関わっているホルモンなのです。
この女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの種類があります。
エストロゲン(卵胞ホルモン)とは
エストロゲン(卵胞ホルモン)は、女性らしさを作るホルモンといわれており、丸みを帯びた体をつくったり、乳房や性器の成熟を促したり、排卵や月経を起こして妊娠機能を維持するといった働きをします。
エストロゲンの分泌は7歳頃から少しずつ始まり、20〜30代前半に分泌量がピークを迎えます。
そして、30代後半頃からは徐々に分泌量が低下していき、40代後半から50代になると分泌量が急激に減少し、やがて閉経を迎えます。
エストロゲンのはたらき
脳 | エストロゲン減少により脳神経系の成長に影響を受け、記憶力の低下や認識力の低下につながります。 |
皮膚 | 皮膚のハリやみずみずしさを保てなくなり、皮膚が薄く乾燥しがちになります。そのため、たるみやしわが目立つようになります。 |
泌尿器 | 膀胱や尿道の粘膜が薄くなることで、尿意を感じやすくなる為、頻尿になります。排尿に関係する筋肉の委縮やゆるみにもつながり、尿失禁に悩むこともでてきます。 |
骨 | カルシウムの形成・吸収を調節する働きに影響を受け、骨量が減少していくため、骨粗しょう症に注意が必要です。 |
心臓血管系 | 悪玉コレステロールを減らす働きが弱くなり、動脈硬化や心筋梗塞などの危険性も上がるため、生活習慣病の予防に注意していかなければいけません。 |
膣 | 膣の粘膜が薄くなり外部からの刺激に弱くなる為、膣炎を起こしやすくなります。粘液の分泌も減少するため、性交痛を感じることもあります。 |
プロゲステロン(黄体ホルモン)とは
プロゲステロン(黄体ホルモン)は、妊娠を維持するために働くホルモンです。
プロゲステロンは、排卵日から月経がはじまるまでの間に分泌量が増えて、受精卵が着床しやすように子宮内膜を厚くし、体温を高くして妊娠に備える指令を出しています。
妊娠が成立した場合はプロゲステロンの分泌が続き、赤ちゃんが育ちやすい子宮環境を整えてくれます。
妊娠が成立しなかった場合は、プロゲステロンの分泌量は減少し、子宮内膜を体外に排出させるのを助けます。
プロゲステロンのはたらき
- 子宮内膜や子宮筋の働きを調節する
- 乳腺を発育させる
- 体内の水分量を保つ
- 食欲を増進させる
- 基礎体温を上昇させる
- 眠くなる
妊娠のためには大切なホルモンですが、その一方でむくみや便秘、肌荒れ、イライラ・憂鬱になるなどの不快な症状を引き起こすこともあります。
女性ホルモンの1か月のリズム
女性の体はおよそ1か月サイクルで、エストロゲンとプロゲステロンのそれぞれにホルモンの波があり、ホルモンのバランスが変化することによって、体調が左右されます。
- 排卵前【安定期(卵胞期)】エストロゲンが優位なので、お肌の状態はよく、精神的にも安定しています。
- 排卵後【不安定期(黄体期)】排卵後はプロゲステロンが優位になっていき妊娠の準備をし始めます。この時期は体温が高くなり、胸の張り、むくみ、イライラなど、身体的にも精神的にも不調が起こりやすくなります。
女性ホルモンが減る2つの原因
女性にとって、とても大切な女性ホルモンですが、主に次の2つの原因で、女性ホルモンが減少するといわれています。
1.加齢に伴う卵巣機能の低下
年齢を重ねるにつれて卵巣機能は低下し、脳からの指令に応えられるだけエストロゲンの量を分泌できなくなります。
2.脳機能の低下
脳からの指令で分泌されるエストロゲンは、脳機能が低下すると、エストロゲンの分泌を促す指令ができなくなります。
睡眠不足やストレスなど、脳機能を低下させる要因になりますので注意しましょう。
女性ホルモンを整える方法
加齢とともに減少していく女性ホルモンを、なんとか増やしたい!と考える方も少なくありません。
けれども残念ながら、女性ホルモンは増やすことができません。
大切なのは、「女性ホルモンを整える」・「女性ホルモンを補う」という考え方を持つことです。
女性ホルモンが正常に分泌されバランス良く保つためには、心もからだも健康であることが大切です。
ひとつの食材をとることで、女性ホルモンのバランスが整うということはありません。
食生活では必要な栄養をまんべんなく、適量食べることが大事です。
また、生活習慣においても、女性ホルモンに良い影響を与えることができます。
それでは、女性ホルモンを整えるセルフケアを、いくつかご紹介しますね。
生活リズムを整える
早寝早起きを心がけ、少なくとも6時間の睡眠が取れるようにしましょう。
また、食事は一定の時間に摂るようにし、朝食は抜かないようにしましょう。
上質な睡眠をとる
良質な睡眠は、脳をリラックスさせることが大切です。寝る直前までスマホなどの液晶画面をみていると、寝つきが悪くなったり、浅くなるなど睡眠の質を落としてしまします。寝る前1時間は液晶画面をみない習慣をつけましょう。
ストレスを軽減させる
ストレスは女性ホルモンの天敵です。ゆったり湯船につかる、お気に入りの音楽を聴いて過ごす、深呼吸するなど、手軽にリラックスできる方法を見つけて、毎日の中に少しでも「自分を大切にする時間」を作ってみましょう。
アロマを取り入れる
アロマテラピーで使われる精油(エッセンシャルオイル)には、エストロゲンの分泌を促進させる効果があります。香りは嗅覚によって脳へ素早く伝わり、エストロゲンの分泌を促してくれます。また、香りによる脳への働きかけは、リラックス効果が得やすいという利点もあります。
女性ホルモンを整える5つのアロマ
クラリセージ
ほのかな甘みを含んだスパイシーな香りは、ストレスを解消させて心を穏やかにし、気持ちを前向きにしてくれます。
ネロリ
柑橘系の優しい香りです。イライラや憂鬱を取り除き、穏やかな気持ちにしてくれます。心の不調で悩む更年期の女性に、特に人気のアロマです。
ゼラニウム
ほのかに甘いローズにも似た香りは、気分の落ち込みやイライラを解消させて、心を明るくしてくれます。
ローズオットー
エレガントな香りは、ネガティブな感情を溶かしてくれます。
イランイラン
濃厚でエキゾチックな香りは、アドレナリンの流出を抑えて、幸福感をもたらしてくれます。
女性ホルモンを整え補う食べ物を摂る
ビタミンEが豊富な食材
かぼちゃ、緑茶、アーモンド、たらこ、モロヘイヤ、アボカド、うなぎ、オリーブオイルなど。
ビタミンB1が豊富な食材
豚肉、たらこ、ハム、ベーコン、いくら、グリーンピースなど。
ビタミンB6が豊富な食材
まぐろの赤身、さんま、あじ、さば、とびうお、いわし、かつお、鮭、にんにく、牛肉、鶏ささみ、ごま、抹茶、バナナなど。
女性ホルモンを整える3つの食材
大豆
大豆イソフラボンは女性ホルモンに似た働きをするイソフラボンが豊富に含まれていることが有名です。
ゴマ
ゴマに含まれるポリフェノール「ゴマリグナン」は女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをします。鉄分豊富で血液増量にもよいのでおすすめです。
卵・チーズ・牛乳
卵や乳製品は良質なコレステロールを豊富に含む食材です。良質なコレステロールは女性ホルモンの材料となります。
※多量摂取は注意が必要です。
女性ホルモンを補うからといって、豆乳や大豆をたくさん摂ろうとする人も多いのですが、エストロゲンが多すぎると子宮がんや乳がん、子宮内膜症などのリスクが高まります。バランスが大事です。
ツボ押しでめぐりをよくする
「痛(いた)気持ちいい」と感じる程度にツボを押しましょう。
呼吸は止めずに、息をはきながらツボを押しましょう。血流が良くなっている入浴後に行うと効果的です。
女性ホルモンを整える4つのツボ
三陰交(さんいんこう)
足の内側のくるぶしから指4本分上がったところ
【押し方】両手の親指で3〜5秒間ゆっくり押す×5回
更年期の諸症状や生理痛、冷えなどの婦人科疾患に効果があり、別名「女の三里」とも呼ばれています。三陰交は、押さなくても日常的に温めるだけで、女性ホルモンの分泌に効果があります。
壇中(だんちゅう)
胸の中心
【押し方】片手の親指で3〜5秒間ゆっくり押す×5回
女性ホルモンの分泌を促すツボで、胸の中心にあります。美肌やバストアップなどにも作用するので、女性には嬉しいツボです。
百会(ひゃくえ)
頭のてっぺん
【押し方】両手の人差し指と中指で3秒間ゆっくり押して戻す×3分程度。
リラックス効果があるツボで、鼻の延長線と耳の延長線が交わる、頭の中心にあります。このツボを押して女性ホルモンの分泌を助けましょう。
安眠(あんみん)
耳の後ろ下にあるくぼみから、指2本分のところ
【押し方】人差し指・中指・薬指で、左右のツボを交互に押す
「安眠」を促すツボです。不眠や不規則な睡眠時間は、女性ホルモンの分泌を低下させます。左右にツボがあるので、眠る前には交互にこのツボを刺激して、良質な睡眠を促しましょう。
女性ホルモンの話、いかがでしたでしょうか。
2つの女性ホルモンがともに働いて、月経や妊娠・出産が成立しているんですね。
年齢を重ねるにつれて女性ホルモンは減少していきますが、毎日の生活習慣を整えることで、対策することはできます。
私たちのからだのなかで、極微量ながらも繊細にバランスをとってくれている女性ホルモン。
なんだか愛しく思えてきますよね。